Live2D Creative Awards 2020 参加作品。
Wacom賞 受賞いたしました! ありがとうございました。 (2021.01.19 追記)

例外だらけの状況で入学した今年度の小学1年生。
なんとか学校生活も落ち着いてきた10月上旬に、これまで何をどう感じていたのかなど訊ねてみました。
この作品は、そんなインタビューを基に部分的に再構成したフィクションです。

表現内容について

短編動画「令和2年度新一年生に大変だったこの半年を振り返ってもらった」 制作メモ images/items/yue01.jpg

コロナ禍真っ只中、2020年度前半の小学一年生の生活は、明に暗にダメージの大きなものだった。
新一年生の大目標のひとつが「新生活への順応」なのに、生活ルール自体が流動的で定まらず、小さな体で常に先の見えない対処を迫られ続けた。
企画当初はそれらの苦労を一つでも伝えられればと考えていた。

しかし未だ生々しい経験を語ってもらうのは本人への負担が大きいため、インタビューの際モデルが少しでも答えるのをためらった内容は全て没とした。
(なお「兄」は心底ストレスフリーだったようで、ネタを提供できない事を少々心苦しく感じていた節がある)

最終的に、可愛く明るい掌編としてまとまった。
出演・協力してくれた方々には喜んでもらえ、観た方々でも特に子持ちの世代に刺さったように思う。
ドキュメンタリーとしての問題提起的な要素は薄まったかもしれないが、彼女らの「見せてもよい自分」に寄り添った結果であり、これはこれで渦中の作品として一つの記録となったと考える。

表現手法について

短編動画「令和2年度新一年生に大変だったこの半年を振り返ってもらった」 制作メモ images/items/yue02.jpg

絵のタッチ

児童画など、歪んで奔放な力強い絵を動かしたかった。
指標として 歯の健康習慣ポスター をイメージした。
最終的には動かしやすさや画面の組みやすさを考え、建物や人体の比率は真面目にとって線や塗りで遊ぶ形となった。

画材は、アバターも背景も、iPad + Autodesk SketchBook + Adobe Fresco
SketchBook のパースガイドと Fresco の水彩が表現を強力に後押ししてくれた。

実写でない事

ドキュメンタリーな内容を実写ではなくアバターや風景画で語ることには、出演のハードルとリスクを下げる効果があった。
外見などの情報に嘘をつけるので、プライベートなエピソードをより安全に公開できる。
また別の効果として、特定の人物の特定の経験としてでなく、より一般化、物語化の進んだ語り口で描くことができた。

実は

アバターが動き始めた頃は動かすたびに爆笑していた。完全に希望通りの強烈なアバターだった。
こんなもん送りつけられたらアワードの方々困るだろうなぁ(でも送る)、とノリノリだった。
今は見慣れたし内容をとことん真面目に作ったので落ち着いた。
多分キモいとか拒否感を持った方もいると思う。
なのでいくつか頂いた共感のメッセージにはとても感謝したし、割と驚いた。

制作フローについて

Live2D を扱ううちに、試したいが通常のアバター制作では使い難い手法の断片がいくつか溜まっていた。
それらの断片と社会的状況とが Live2D Creative Awards 2020 の作品テーマ「Start!」の下に一つとなって制作フローのアイデアが浮かんだ。
それは明らかに現在の自分しか作ろうと思わないものだったので、じゃあやろうとなった。

以下、技法や内容についての個別の話。

(ツイートなどしたら適宜増やします)

Moli

Moli によるモーションの記録と編集はいつか使いたいトリックだった。
これによってインタビューとモーショントラックと編集を別個に処理できた。
画像は編集時の Cubism Editor 画面。首の向きを大きく変えてある。

短編動画「令和2年度新一年生に大変だったこの半年を振り返ってもらった」 制作メモ images/items/yue00.jpg

目玉焼きカット

単純なこの素材が今回の技法的目標を一番よく実現させていると思う。

花びら

これは春ごろに見つけた手法。やわらかい変形をパラメータ化して手付けで移動などアニメしている。

受賞!

制作時にはコロナの勢いがだいぶ収まっていて「やっと終わるかもね」という雰囲気だったのでそのように作ったけど、令和3年1月現在はこれまでを上回る感染の拡大っぷり。恐らく出来立てで観た人と今初めて観る人、半年後に観る人とで受ける印象の変わる動画だと思う。リアルタイムな世情を反映した作品はほぼ初めて作ったので、時節による作品の在り方の変遷が興味深い。

その他ネタメモ

  • BGMぴったり
  • SE
  • 握り箸画法
  • まつ毛の立体感
  • モデルスケッチに re-play-er