動画を一本まとめた。
「 肉眼グレアエフェクト(主にマツゲ)の再現と観察 」。
ずっとマツゲの観察など続けていたんだけど、ここの記事としてテキストに起こそうとするたび、
不明点や疑問点、テキストだと伝わらない点が出てきて、
何度もやりなおすうち「もう動画で見せた方が早いや」となった。
内容は、
- スマホカメラにマツゲをつけて撮影し観察。肉眼での見え方と比較する。
- レーザーポインタを使って回折実験など行いつつ、肉眼で見られる曲がった光条の成り立ちを再現する。
- 夜景など新たに撮影し、実写での利用法など考察する。
といったもの。
テキストにまとめ辛い経験的な内容も、動画なら「こう見える」ドリブンで進めやすかった。
以下、動画に入れられなかった内容など散発的に書く。
なお、このブログで「 裸眼フレア 」と言ってきたものを、動画では「 肉眼グレア 」という呼び方にした。より実態に即していると思う。
2019.05 ノートのタイトルを「裸眼フレア」から「肉眼グレア」に変更
曲がった光条の性質について
このブログ的に一番大きい話題は、スリットやオブジェクトを傾けることで回折結果が曲線を描くという点。 関連して、円筒に反射/透過した光も似たような位置にプロットされる点。
反射や透過は幾何学的に考えればそのうち理解できる気がするけど、
でも回折はとても難しい。なんやかんや打ち消しあってその辺が残るって事なのかな。不思議。
具体的な曲がり方についても知りたかったけど、自分でははっきりした結果は出せなかった。
ところが動画アップ後、参考資料としても載せた HAMDANI YUSUF さんの新しい(といっても半年前の)動画を見ると、 回折も円柱の反射も曲がり方が円弧に沿うという事が紹介されていた。
“ Investigation on Diffraction of Light 16 : Cone of light “
この情報が欲しかった!これでまた一歩、曲がった光条をエフェクトとして作りやすくなった。
余談だけど、彼もクギ使ってて笑った。クギほんとちょうどいい。
ヘアライン仕上げの金属板の反射
エスカレーターの、側板に金属が使われているタイプのものを下から見上げる時、
側板に反射した上階のランプの光が妙に曲がって見えることがある。
特に入射/反射角が大きい時。
光条の曲がる理由について悩んでいた時期にそれが気になったので、
動画撮影時に上の画像の実験もやってみたところ、見事に円弧状の反射結果が得られた。
クギでの反射と似た仕組みが、ヘアラインの凹凸一本一本で起こっているんだろうと思う。
上のGIFで使っている板は100均の料理用スクレーパー。ヘアラインは持ち手と直角方向へついている。
よい映像なので是非入れ込みたかったが、話がそれるので泣く泣くカットした。
回折像を壁に映す場合と撮影する場合との違い
ヨドバシでポチったレーザーポインタが届き、うきうきでマツゲをかざし、壁にいつもと上下の反転した光条が映った時は文字通り目を疑った。 何度試しても次の日やっても同じ結果で、そこから1~2週間そればかり悩んでいた。
また、以前Youtubeにアップした「 お手軽二重スリット実験 」の動画に、「なぜ干渉痕がスリットの向こう側にあるように見えるのか」といったコメントをいただいた。
確かにそう見える。カメラで直接撮ってばかりだった私の経験的には、スリットのボケ味と光条の長さが同じである事は普通の事だったので、スリット実験としてこれが奇妙に見えることには思い至っていなかった。
今では結局上記のどちらも、直接撮影した事の影響だと考えている。
以下にその特性を「画像全体」「一点からの光のボケ味(ここでは特に前ボケ)」「スリット実験の回折像」の3つの比較によって考察したい。
風景全体の無数の点から発した光はそれぞれ、撮像面上で逆さの位置(光軸を中心に点対称)にプロットされるため、画像全体は上下逆さに結像する。
しかし任意の一点からの光のボケ味を見てみると、それ自体は逆さにはなっていない。
スリット実験の回折像は、スリット上の一点から扇状に広がったものであり、一点からの光のボケ味と非常に似た形で撮像面に届くものだと考えられる。
だから画像全体と違って逆さにならないし、レンズ形状、絞り形状で切り取られるためスリットのボケ味と同じ幅しか撮像面に届かない。
スリットをマツゲに変えても同じ事が言える。
カメラで撮った光条は壁に投影したものとは逆さとなり(実際は画像全体が逆さ)、また絞りで切り取られるのでブツ切り感が強い。
予想だけど、マクロレンズでピントを無理やりスリットに合わせれば回折像もまたただの点になるんじゃないかと思っている。
追記:
【 自作ボケフィルターでハートや星形のイルミネーションを撮影してみよう![自作キット配布] (studio9)】
上記リンク一番下ぐらいに、「前ボケは逆さまに写るはずです。」の一文。これだ。
実写での利用の可能性
動画作成にあたってとりあえずスマホにマツゲつけて色々撮ってみたところ、主観として説得力のある映像が、少ない労力でいくつか撮れた。
もちろん今は、画質悪いし白飛びひどいしコントロールも効きにくいけど、実写の道具として洗練してゆく道もあるんだなと感じた。
ただ性質上、大きなレンズ、長いレンズが使えない。多分。
何度かハンディカムにマツゲをかざして撮ってみた時、グレアエフェクトの色味はスマホよりずっと美しく、虹色も良く出ていた。
撮像センサの大きさが重要なのかなと推測している。
しかし肉眼グレアとしては全く満足いくものではなかった。
マツゲから撮像素子の距離が遠すぎて、マツゲの写り込みが強すぎたり、光条が長く伸びなかったりした。
センサ大き目で焦点距離短め、レンズ小さめのカメラとなると。
単焦点の高級コンデジなら良いものが撮れるかもしれない。持っていない。
マツゲ以外の肉眼グレア要因
- 瞳孔形状
- 角膜組織
- 水晶体組織
- 硝子体組織
などでのグレアが先行の研究で指摘されている。動画内では丸々カット。
経験的には、街灯や遠くのヘッドライト程度の光なら、各種組織やマツゲでの回折虹模様が支配的。より繊細で幻想的なグレアが観察できる。
光源の眩しさが増すにつれそれらの虹や縞は潰れ、(私見では反射が主成分じゃないかと思っている)視界端までのびる光条や、(これは反射と確信している)オーブ状ゴーストなど大雑把なグレアが目立ってくる。
今回の動画、特に実写観察部分ではその大雑把な方が主となった。今後は光量と生まれるグレアの関係を洗い出すのも面白いかと思う。
今後
今回基礎的な内容をまとめることができたので、今後の部分的な観察や再現に展開しやすくなった。
例をあげてみたらいくらでも思いついた。
- 観察指針
- マツゲの傾きと円弧のサイズの関係
- 反射成分の詳しい観察
- 光条とオーブはシームレスに変形できるのでは
- オーブ内のハイライト的なスジは回折成分なのでは
- 光条やオーブの画面上のサイズについて
- 画角
- 光源光量の違いによる変化
- 機材の違いによる変化
- センササイズ、レンズサイズ、焦点距離
- etc.
- 実写ツールとしての試行
- タヌキ毛、馬毛
- 下まつ毛
- まぶた(肌色っぽい樹脂に切れ込みとか)
- etc.
- エフェクトとして再現
- 円弧として作る光条
- AfterEffect かなにかで自動変形、配置
- 画角に合ったエフェクトサイズ
- 光源形状に合ったグレア
- 点光源でつくったグレアを形状に合ったブラーさせるとか
- etc.
- 円弧として作る光条
死ぬまでやれる。